時代が令和に変わっても、世の中がすっぱり変わるわけじゃない。
ほんの数ヶ月前「新しい時代ではこんなことなくなったらいいな」と思ったことが今日も起こり、平成から地続きで毎日は続いている。つらみ。
例えば職場で言われた何気ない一言に、飲み会で耳にしたあの言葉に、自分の周りの空気は少しずつ澱んで、モヤモヤした息苦しさが蓄積されていく。
だけど、最近、ほんのちょっとずつだけれど時代の空気が入れ替わる気配がしませんか?窓の隙間が1ミリ程度開いたくらい、ほんのちょっとずつだけれど。
このコラムでは、日々流れ弾のようにエンカウントしてしまう古い価値観の言葉「#モヤモヤワード」に対し、スカッと令和的に打ち返す言葉「#レイワード」を提唱していきます。さあ、時代の空気を入れ替えるお時間ですよ〜!
もはや“働く女性全員言われたことある説”なワードが「女性の感性で」「女性ならではの視点で」。
なんやねんって感じですね。世の女性たちがみんな揃って同じ「女性の感性 」を持っていたら、さぞかし恋愛も企業の商品開発も簡単で、たいそう退屈な世の中になったことでしょう。
これを読んで「いや〜、とはいえ女性の方が感性豊かだし、女性にしか気づけないことってあるじゃん?」と思ったあなた。では考えてみましょう。男性にお仕事を頼むときに「男性の感性で」「男性ならではの視点で」って聞くでしょうか?聞かないですよね。ここがポイントです。
そもそも「男性の感性で」といちいち言わないのは「男性はビジネスの場において多数派である」ということが知らないうちに前提とされているからです。「男性の観点でビジネスが回っている全体」がまずあり、女性の意見も取り入れてあげるよ〜女性の感性でよろしく頼むで〜〜という姿勢なんですね。う〜〜んモヤモヤする〜〜!
さらに、女性に仕事を頼む時は「女性」であることの欄にチェックがついて、なんとなくピンクで可愛らしいデザインだったり、家事育児や恋愛・結婚にまつわる企画だったり「女性っぽい」仕上がりが期待されてることが大いにあります。ここに性別による偏見、いわゆるジェンダーバイアスが隠れているのですね。気づかないうちに性差別をして・されてしまっているわけです。
たとえば、丸の内の銀行員と、原宿のアパレル店員と、赤坂のコピーライターと、清澄白河のバリスタ。こう聞くとそれぞれ全く違った価値観を持っている人たちのように思えるのに、性別が女性と聞いた瞬間、なんとなーく共通した「女性の感性」を持っていることにされてしまう。そんな訳あるかい!
当たり前ですがこれはなにもピンクのデザインや家事育児や恋愛系の企画をばかにしたり、茶化したりしているわけじゃないのです。ただ、ピンクのデザインや恋愛企画は男性だってやるし、ゴリゴリのバトル漫画を書いてる女性もいるし、そもそもピンクだからって恋愛ものだからって女性向けとは限らないし、バトル漫画も男性だけのものじゃない(私は女だけどHUNTER×HUNTERもジョジョも大好きです)。みんなそれぞれ個人として持っている特技特性や感性を、性別とくっつけないでよね!という話なのです。「女性の感性」はフィクション!まぼろし!想像上のもの!例えるならそうツチノコ!ツチノコに仕事を頼むな!!
派生系のツチノコ的モヤモヤワードに「女性の細やかさ」がいます。マネジメントや幹事役を頼まれるときに「女性ならではの細やかさでよろしくお願いします」的に言われたことある方もいるのでは。うわ〜〜やめてほし〜〜!(2回目)
女性だからという理由だけで、怒らないで周囲をとりなしたり、細かいところに配慮したり、クッション役になったりするタイプの能力をなんとなく求められて、そうならなきゃと知らないうちに思わされてしまう。怖!もちろんそういう芸当ができるソフトな女性上司も素敵だけど、パワー型の女性上司だっていいじゃん!湯婆婆を見ろ!ドーラを見ろ!全然細やかじゃないけど成果を挙げて部下から尊敬されてるじゃん!
世界を男と女に分けてそこに感性の話もくっつけて考えてしまう人に対していうべきことは「感性は男女2種類ではなく個人それぞれ千差万別で、私にできるのは私の感性で良いと思った仕事を精一杯やるだけ」ということ。仕事を頼まれても自分の性別を代表した(っぽい)ものを作ったり考えたりするいわれはありません。「女性の感性というのはよくわからないですが、“私の感性”で良いと思う仕事を精一杯やります!」と返してやりましょう。良い仕事に男の感性も女の感性もないのです。
ここまで女性を例に挙げて話をしてきましたが、男性だって仕事で「男気」とか「男なんだから」とか謎のプレッシャーをかけられて辛い場面、きっとたくさんあるはずです。それも「女性の感性」と同じで、自分の性別を代表した(っぽい)仕事の仕方や振る舞いを求めるモヤモヤワードですよね。男性だってそういう押し付けを「嫌だ」と言って良いんです。男も女もみんながそういう類のモヤモヤから解放されて、性別の乗っからないところで自分の得意なこと、自分の感性を発揮できるようになった方がきっと世界は楽しくなるはず!
とはいえ職場で「私の感性で頑張ります!」とか言うのめちゃ勇気いりますよね。もしかしたら思ってること伝わらないかもしれないし、変な空気になるかもって思っちゃう。だけど「女性の感性」(もしくは男気的なもの)を求められて、意思に反して「求められているであろう自分の性別を代表した(っぽい)仕事」で答え続けてしまうと、永遠にその要求から逃れられません。そうなると自分が辛いだけでなく、次の世代にも「そういう仕事」が求められ続けてしまいます。ツチノコは、誰かが「いる」ことにしてしまうと永遠に探され続けてしまうんです。ツチノコ幻想は早いとここのへんで終わりにしましょう。令和だし。みんながちょっとずつ反抗して、ちょっとだけ勇気を出して、自分の周りのモヤモヤした空気を「換気」したら、いつか世界に気持ちいい風が吹くと思いませんか?
イラストレーター:眞庭りえ
Twitter: @ma_r_n_ie
編集:辻愛沙子
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