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Ladyknows Meet&Talk Event Vol.1


明日、いよいよLadyknows Meet&Talk Event Vol.2が開催されます。
テーマは「ルッキズムと美容」。
豪華なゲストをお呼びして、“とらわれない美容” について語り合う会。
いつもと違う自分を解放できるシーズンでもあり、そのぶん見た目が気になる時期でもある夏だからこそ、日々の自分自身に対する悩みや他者への向き合い方など、皆で共有しながら理解を深めていけたらと思っております。

振り返ってみると、先月 7/8(月)、「Ladyknows Meet&Talk Event Vol.1」と題してLadyknows初のトークイベントを開催したところから、このイベントはスタートしました。

第一回目は、一部と二部の二本立て。
第一部はLadyknowsの運営メンバーである辻(代表)、牧野、つっきーによる「Ladyknowsの目指すビジョン」に関するお話を、
第二部ではゲストに育休男子.jpを運営されている高橋俊晃さんと、3児のパパ看護師であるてるりんさんをお招きして、「男性の育児/育休のほんとのところ」と題したトークセッションを行いました。

明日の第二回に先駆け、
前後編に分けて第一回目のレポートをお届けします。


第一部:Ladyknowsが目指す不均衡のない未来とは。


辻:本日はたくさんの方にお集まりいただきましてありがとうございます。子育てがテーマの一つということもあり、お子さんを連れてきてくださったり、男女比も半々だったりととても嬉しく感極まっております。
 Ladyknowsは4/10に立ち上げたプロジェクトで、いますでに世に出ているものとしてはWebメディアがあるのですが、今回はいま準備している企画も含め、私たちがこれから何をやっていこうとしているのかを、運営メンバー3人でお話できればと思います。

〜運営メンバー自己紹介〜


辻:Ladyknows代表の辻と申します。普段はエードットグループの広告代理店である株式会社カラスでクリエイティブを作る仕事をしています。
 タピオカ屋さんのブランディングだったり、ナイトプールのアートディレクションだったり、主に女性向けの企画を企業様にご提案することが多いのですが、その中で「女子大生なのにクリエイティブディレクター」などと取り上げていただくことが度々ありました。
それによって知って頂ける機会も少なくないですし、もちろんそのありがたみを感じることもあるのですが、そもそも「男子大生なのに」ってあんまり聞いたことがないなという素朴な疑問と違和感から、少しづつジェンダーの不均衡やアンバランスさを感じ始めました。他の言葉に置き換えると差別や侮蔑になるのに、若い女性だとそれが褒め言葉になるということを実体験として感じたことが多かったので、そういった日常の中での違和感がLadyknowsを立ち上げるきっかけの一つになったと思ってます。

つっきー:Ladyknowsで編集・ライター・SNS運用やイベントの企画もやっているつっきーと申します。普段はティーン向けのネット番組の企画制作・プロモーションをやっています。
 なぜLadyknowsの運営にジョインしたかというと、若い女の子向けのコンテンツを作る中で、「女の子の描かれ方ってこれでいいんだっけ」といった違和感を感じるようになったというのがあります。例えば女の子が作った料理を男の子が判定する企画とか、そもそも「女子高生」っていう冠をつけたりとか、そういう消費の仕方っていいんだっけとか。
 あとは自分がメディアで働く中で、一緒に働く女性の立場とか、置かれている環境に関しても思うところがあり、自分にも何かできないかと考えている時に牧野さん辻さんとの出会いがあり、Ladyknowsの構想にとても共感したので仲間に入れていただきました。

牧野:株式会社カラスの代表をしております牧野です。なぜLadyknowsを立ち上げようと思ったのかというと、こう言ってはなんですがビジネス的にすごくチャンスがあると思っていて。
 というのも、辻が大学3年の時にカラスに入ってきてくれてから毎日一緒に働く中で「若い女性ってこんなにも不均衡や悪意に晒されているんだ」ということに初めて気がつきいたんですね。それまではほとんどそういったことに無関心で、女性は生理があって毎月大変な思いをしていることとかは正直20代の頃は考えたことがありませんでした。
 SNSなどを見ていてもそう言った問題に世の中がすごく敏感になってきているし、リテラシーもすごく上がってきている転換期だと思います。しかしこういった問題に取り組める人間がどれくらいいるのだろうと考えると、実はあまりいない。僕は会社をやっているので、会社のリソースを使って何かできるんじゃないか、これはチャンスだなと思ったんです。
 普段はクライアントワークを中心にやっている会社ですが、Ladyknowsはかなり特殊な取り組みとしてやってみようと会社のメンバーと一緒にはじめました。


辻:ブランドジャーナリズムというキーワードが牧野さんのプロフィールに入っていると思うのですが、最近は広告コミュニケーションにおいて「こういう商品があって、機能はこうです」という訴求の仕方だけでなく、「その企業が何を応援しているのか」という思想を表明する「ジャーナリズム性」のある形が増えてきていると感じます。
 そういう思想軸のビジネスが今後増えてくると思っているので、この考え方はLadyknowsとしても大切にしています。

〜そもそもLadyknowsとは〜


辻:Ladyknowsは一言でいうと「ムーブメント」だと思っています。どういうことかというと、Ladyknows自体が主体になっているわけではなく様々な人や考え方が集まる箱として、メディアであったり、これから作っていくプロダクトであったり、こういったイベントであったり、広告代理業であったり、最終的に行きつきたいと思っている教育であったり、全てが一つの思想の元に繋がっているけれどやっていることはいろんな形態があるという状態を目指したいと思っています。
 その思想として何を目指していくのかというと「フェミニズムのあたらしい形」です。フェミニズムと聞くと今はいろんな解釈のされ方があり、マイナスなイメージがつくようにもなってきたと感じていますが、そんな中でデザインだったり空間演出だったり、私たちの得意とする手段でジェンダーに関わる社会問題の解決をしていきたいと考えています。例えば「カープ女子」のように、野球の長年のファンではなくでも「なんとなく赤くてポップで可愛いから」というきっかけでカープを好きになるライトな層が増えるということはムーブメントとしては往々にしてあることです。
 社会問題も「可愛さ」「ダサくなさ」といったいわゆる「社会性」っぽくない雰囲気で伝えていくことで、なんとなく日常でモヤっとしたことに声を上げやすくなったり、友達と話しやすくなったりするきっかけが作れると思っています。

〜Ladyknows_Dataでやっていくこと〜


辻:LadyknowsのWebサイトには現在大きく稼働しているところでいうと「Data」と「Voice」があります。
「Data」はビジネス書の「ファクトフルネス」のように、ともすれば対立構造になりがちなフェミニズムやジェンダーの問題を、数字やデータや事実に基づいて取り上げるコンテンツです。
 アニメーションつきのグラフを作り、様々な分野のデータを少しずつ蓄積していっているのですが、例えば、女性が子供を身体的に妊娠しやすい年齢が約22歳なのに対して、第一子を妊娠する平均年齢は最新のデータで30歳。8年間もの開きがあるということがわかります。
 自分の人生の選択肢をそれぞれが考えていく中で、「時代が変わっても体は変わらない」ということを意識しなきゃいけないよねということを、グラフがきっかけで議論できるようになる。そういうきっかけになるような事実をどんどん発信していきたいと思っています。

牧野:一番最初にLadyknowsを始めるきっかけになったのも実は一枚のグラフでした。「健康診断や人間ドックを1年間以上受診していない人の割合」のグラフで、びっくりしたのは30代の女性の44%が健康診断に行けていないということ。これはすごい問題だと思いました。
 健康診断は企業や属している組織で受けることが多いと思うのですが、30代の女性は出産などを機に仕事をやめて家庭に入ることが多く、健康診断にいく機会が得られない。このグラフをきっかけに、あるプロジェクトを始めようとなったのがLadyknowsの始まりです。
 「あたらしいフェミニズムの形」という話が出ましたが、僕もSNSを見ていて「フェミニスト」「フェミニズム」という言葉に変な色が付いてきていると感じていて、そんな中で「データで語る」という客観性にはすごく意味があると思います。例えば夫婦別姓のグラフを見ても、95%が男性の姓を名乗るというのは女性が働く上でもかなり不均衡です。当たり前のように男性の名字を名乗る風潮は今の時代には合っていない。そういった議論をする上でもデータで示すというのはとても価値があると思っています。

〜Ladyknows_Voiceでやっていくこと〜


牧野:VoiceはDataとは真逆で、個人の想いだとか個別に感じる不均衡を表現していく場所にしたいと思っています。

辻:Ladyknowsで大事にしていきたいのは、「正解は一つではない」ということです。知れば知るほどいろんな価値観や正義が絡み合っているのが現代。
 例えば男性の育児休暇の取得率が低いということを知ると「男性もっと育児に参加してよ!」と言ってしまいたくなりますが、先日のカネカのパタハラ問題などを見ると育休を取りたい男性に取らせることができない社会の同調圧力があるという背景も見えてきます。さらにはこの問題が男女の賃金格差に繋がっていたり、一つの問題にはいろんな側面があると思っています。
 いろんなデータを見ていく中で様々な悲しい現実を知りましたが、そんな中でそれぞれ個人は何を思って、何を考え、どう暮らしているのだろうことを声にして届けたいと考えるなかで、できたのがVoiceです。
 女性の生き方といえば「結婚して子供を育てる」というのがスタンダードだった時代から、今はいろんな選択肢が増えてきました。それは嬉しいことですが、例えば独身で仕事にとても充実感を感じている女性でも、週末に友達が結婚式をあげているのをインスタで見た途端、自分は何かが足りないんじゃないかと思えてしまったり、選択肢が増えると別の選択肢について想像してしまう。そんな時代に、「あなたは一人じゃないし、道は違えどそれぞれみんな一生懸命生きている」と思えるような声を集める場所にしたいと思っています。

つっきー:私もLadyknows_voiceでコラムを書かせていただいています。勝手にLadyknowsのちょけ担当だと思っています笑 フェミニズムやジェンダーの話題って堅くなりがちだと思っていて、もちろん専門的な話だったり、真面目なトーンで書かないといけないコンテンツも絶対に必要だと思うのですが、それだけだとそもそも興味がない人が入ってきてくれない。
 そういう考えから、日常で働いているなかで言われたり飲み会の席などで聞いたりした「モヤモヤする言葉」に対して、クレバーでかっこよくて楽しい打ち返し方を考えようというテーマで書いています。一本目は「女性の感性」というモヤモヤワードについて書かせていただきました。

辻:それぞれの人がいろんな価値観で生きているという想いが集まる場所にしていきたいと思っているので、男性である牧野さんだったり、人気ライターの5歳さんだったり、ナースあさみさんという看護師さんだったり、本当に様々な方に書いてもらっていて、今後もライターさんは増やす予定です。辛いことや苦しいことが会った時に、「みんな同じではないけどそれぞれ頑張って生きているんだな」と思ってもらえたら嬉しいです。


〜LadyknowsのSNSに関して〜


つっきー:私はLadyknowsのTwitterアカウントの中の人もやっています。ここではDataやVoiceの最新コンテンツのお知らせだけではなく、毎日流れてくるジェンダーやフェミニズムに関するニュースを、良い話も悪い話も媒体問わずシェアしていき、「ここのアカウントを見ればそういったニュースが網羅されている」という状態にしたいと思っています。堅い媒体から柔らかめの媒体、話題になった一般の方のツイートやブログなども含め、#Ladyknows_news をつけて毎日発信しています。他にもフェミニズムに関する本や映画をレコメンドする#Ladyknows_books #Ladyknows_movie など、分野ごとにハッシュタグを分けて情報を貯めていける場所を目指しています。

辻:Ladyknowsはあくまで箱で、プラットフォームで、ムーブメントでありたいと思っているので、媒体ごとのSNSのように速報を出したりするやり方ではなく、ネット上に散らばっている様々な情報を繋ぐ場所にできたらと思い、少しずつフォロワーを増やしているところです。


〜デザイン・UI・UXへのこだわり〜


辻:カラスは広告クリエイティブを作る優秀なデザイナー・エンジニア・アニメーターを抱えているので、広告で培った技術を社会問題の解決への提案に使っていけたらと思っています。例えばサイトのUIに珍しい動きを取り入れたり、グラフをアニメーションにしたり、そういった「面白さ」や「可愛さ」へのこだわりが、こういった問題に興味をもつきっかけになってくれたらいいなと思っています。

〜男性が参画していることの価値〜


牧野:フェミニズムという言葉の空気感が変わればいいなと思っていて、そのためにデザインにもこだわったりしてる中で、男性である僕と5歳さんがメンバーに入っているというのもすごく意味があると思ってます。なかなかこういった問題に男性が入っていくのは難しかったと思うのですが、男性がいて、男性の目線でどう感じたのか、問題をどう捉えるかを語っていくことが大事だなと思ってます。5歳さんにも一言いただきたいと思います。


5歳:Ladyknowsに入らない?って言っていただいた時すごくいいなと思って、というのも僕は去年から生理についてよくコラムを書いていたんです。
 今まで男の人って生理についてあんまり語ってこなかったと思います。むしろ、女の人が生理が大変だとかホルモンバランスがという話をすると「ハイハイ」的な、毛嫌いまで行かないけどそういう反応って確実にありました。
 僕も結婚して10年くらい経つんですが、嫁が生理でイライラしたり八つ当たりされたりたくさん経験しました。でも生理についてちゃんと調べてみると、ホルモンバランスとかってもうどうしようもないし、生理のイライラって止められないということがわかったんですね。
 そういうことを理解したのでコラムを書いてみたら、男の人って案外生理についてあんまり知らないんだというのがわかって。CMとかでみた「二日目って大変」とか「貧血気味」とかその程度の知識で、PMSとかホルモンバランスの話とかは広く知られていない。まさにLadyknowsだと思うのですが、女の人について知れば、カップルでも相手に優しくできたり、この時期はしょうがないって思えたりできると思ってるんです。
 僕はフェミニズムって言葉が将来的にはなくなればいいと思っていて、Voiceでは僕もガヤ担当として笑いを取り入れながら夫婦や男女の問題について書いていこうと思っています。

辻:フェミニズムという言葉について話が出ましたが、私は究極フェミニズムを突き詰めていくと(本来の言葉の意味とは違ってくるかも知れませんが)ヒューマニズムに行き着くと思っているんです。女性が仕事しますというと「家庭どうするの?」って当たり前のように聞かれる。それって女性がとか男性がとかいう話ではなく、個々の選択の話だと思うんです。女性の中でもいろんな価値観があるし、男性だってそう。何を大事にするかはこれまでの人生で培ってきた個人の文化のようなものなので、女性だけの話ではなく人類全体の話だと思っています。


〜これからの取り組み〜


牧野:今後の取り組みとしては言えることとまだオフレコなことがあるのですが、企業との取り組みをどんどん進めて行きたいと思っています。当たり前ですが世の中の半分は女性で、女性に対してプロダクトやサービスを作っている会社はいっぱいあって、もっと女性との接点を持ち、女性の味方となり、ファンを増やして欲しいと思っています。
 ただ、その反面炎上するのが怖いという時代でもあります。この半年だけでも女性に向けた広告で炎上したものはたくさんありました。作る側の力量の問題ももちろんありますが、シンプルに社会課題にアプローチする広告は難しい。けれども、そういった仕事もこのチームでチャレンジしていきたいと思っています。

辻:女性に向けた広告コミュニケーションの炎上には2パターンあると思っていて、一つは悪意があるパターン。多様性やジェンダーの問題を軽視している作り手の表現です。こちらは救いようがないです。
 もう一つは表現方法が間違っているパターン。社会問題を解決したいという思いはあるものの、どう表現したらいいかわからないという場合もあります。後者に対しては、我々は四六時中そういう問題について考えているチームなので、何かお手伝いできたらいいなと思っています。

牧野:最近僕がやった事例でOisixさんの広告があります。クレヨンしんちゃんの野原みさえさんを「キャスティング」して、みさえさんを讃える広告を母の日に出しましょうという提案をしました。
 野原みさえさんは日本で一番有名なお母さんだと思うのですが、30年間ずっと家事してるんですね。日本もどんどん変わって、男性も家事や育児をする人も増えてるんですが、現実はまだまだ変わっていないよね、ということの象徴がみさえさんだと思うんです。
 この広告では、Twitterでバズって回ってくる「3分間でみさえさんが朝の家事を全部やる」っていう動画のシーンを使ってみさえさんを讃えつつ、やっぱりまだまだ現状は変わってませんよねということを表現しました。
 Oisixにはご飯を作る時短のキットがあったり、お母さんを手助けできる商品を作っているので、これからみさえさんの暮らしがもっとよくなるようにOisixはチャレンジしていきますというメッセージを込めました。「結局女性が家事をやることを奨励してるんじゃないか」という受け取られ方にならないかとか、文章を書くのにかなり考える時間を使いましたが、結果的に良い評価をいただけたと思っています。

辻:この表現は誰かを傷つけないかとか、自問するのが大事ですよね。差別絶対にしませんって言い切れる人は、その想像力の欠如から気づかないところで誰かを傷つけてしまう。特に広告クリエイターは、社会へ向き合う職業でありその表現を日中や考えているべき職種でもあるので、自分の知らない領域や人生があるのだという自覚を持ったうえで、ありとあらゆる想像力を使って、一つの言葉が孕む「誰かを傷つける可能性」について考えることがものすごく大切だと思います。

牧野:僕自身もまだまだだと思っているので、僕らみんなで力量を磨いてチャレンジしていきたいと思っています。

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